「簿記2級に合格したら、次は1級まで取るべき?」「簿記1級は難しすぎると聞くけれど、働きながらでも目指せる?」
簿記1級は、2級の少し難しい版ではありません。商業簿記と工業簿記を深めるだけでなく、会計学と原価計算を含む4科目を学び、会計基準や法規を踏まえて企業の数字を分析する力まで問われます。
一方で、難しいから全員に不要というわけでもありません。会計を専門にしたい人には大きな学習目標になりますが、まず経理へ転職したい人は、1級より実務経験や応募準備を優先したほうがよい場合もあります。
この記事では、簿記1級の難易度を2026年9月時点の公式情報で整理し、合格率・試験範囲・勉強時間・2級との違いに加えて、あなたが受けるべきか、次に何をすればよいかまで解説します。
- 簿記1級の試験科目・合格率・受験料と2級との違い
- 難しい理由と、合格までに必要な学習時間の目安
- 1級を目指す人・今は見送る人の判断基準
- 受験を決めた後の現実的な学習計画
簿記1級は、会計を専門にしたい人が2級の次に目指す上位資格です。経理へ入ることが最優先なら、1級の勉強を始める前に実務経験や応募準備との優先順位を決めましょう。
2級レベルを土台に500〜600時間前後が一つの目安ですが、これは公式の保証値ではありません。まず4科目のサンプル問題を確認し、次の試験日までに週10〜15時間を継続できるかで判断するのが現実的です。
簿記1級の難易度を2級と比較
最初に、2026年9月時点の日本商工会議所の公式情報と、学習時間の参考値を一覧で比べます。
| 比較項目 | 簿記2級 | 簿記1級 |
|---|---|---|
| 公式のレベル | 高度な商業簿記・工業簿記を理解し、適切な処理や分析をする | 会計法規を踏まえ、高度な会計処理・経営管理・経営分析を行う |
| 試験科目 | 商業簿記・工業簿記 | 商業簿記・会計学・工業簿記・原価計算 |
| 試験時間 | 90分 | 前半90分+後半90分(途中休憩あり) |
| 合格基準 | 70%以上 | 70%以上、かつ各科目40%以上 |
| 2026年度受験料 | 5,500円 | 8,800円 |
| 試験方式 | 統一試験・ネット試験 | 統一試験 |
| 実施機会 | ネット試験は会場ごとの日程 | 原則年2回(6月・11月) |
| 学習時間の参考 | TAC目安200〜250時間(3級レベル前提) | TAC目安500〜600時間(2級レベル前提) |
同じ70%以上でも、1級には科目別の足切りがあります。合計点が高くても、一つの科目が40%未満なら合格できません。得意科目だけで押し切れないことが、2級との大きな違いです。
また、1級は2・3級のようなネット試験がありません。試験日に合わせて4科目を同時に仕上げる必要があり、知識だけでなく長期計画と体調管理も難易度に含まれます。
2級までの違いや、自分がどの級から始めるかを整理したい方は、先に次の記事を確認してください。


簿記1級が難しい4つの理由
合格率の低さだけを見ても、1級の難しさの中身は分かりません。学習を始める前に、何が2級から変わるのかを具体的に確認しましょう。
1.4科目を横断して理解する必要がある
1級では、商業簿記・会計学・工業簿記・原価計算の4科目を学びます。計算手順を覚えるだけでなく、会計処理の根拠や、数字を経営判断へどう使うかまで理解する必要があります。
商業簿記と会計学、工業簿記と原価計算は互いに関係します。一つの論点を孤立して暗記するより、「なぜこの処理になるのか」を説明できる理解が求められます。
2.学習範囲が広く、忘却との戦いになる
前半を学び終えるころに、最初の論点を忘れていることがあります。新しい範囲を進めながら既習範囲を復習するため、1週間の中にインプットと問題演習の両方を組み込まなければなりません。
2級の仕訳や原価計算に不安が残る人は、いきなり1級教材へ進まず、先に基礎を復習したほうが結果的に早く進めます。

3.各科目40%以上の足切りがある
合格は全体70%以上に加え、1科目ごとに40%以上が必要です。苦手科目を捨てる戦略は取れません。
学習後半では総合点だけでなく、4科目それぞれの最低点を記録しましょう。毎回40%を割る科目があるなら、得意科目の追加演習より先に弱点を戻す必要があります。
4.試験日が限られ、仕上げの期限が固定される
2026年度の1級は6月14日と11月15日の統一試験です。2・3級のネット試験のように、学習進度に合わせて会場日程を選ぶ方式ではありません。
仕事の繁忙期や家庭の予定と重なる場合は、単純に「半年後」を目標にせず、試験日から逆算して直前期の時間を確保できるか確認してください。
簿記1級の合格率は10〜20%台で推移
日本商工会議所が公表した直近5回の受験者データは次のとおりです。
| 回・試験日 | 実受験者数 | 合格者数 | 合格率 |
|---|---|---|---|
| 第173回・2026年6月14日 | 9,806人 | 2,076人 | 21.2% |
| 第171回・2025年11月16日 | 10,524人 | 1,604人 | 15.2% |
| 第170回・2025年6月8日 | 9,610人 | 1,343人 | 14.0% |
| 第168回・2024年11月17日 | 10,420人 | 1,572人 | 15.1% |
| 第167回・2024年6月9日 | 9,457人 | 992人 | 10.5% |
※日商簿記1級は原則6月・11月に実施され、2月回は2級・3級のみのため、回数が飛んでいます。
最新回だけで「易しくなった」と判断しない
最新の第173回は21.2%ですが、その前4回は10.5〜15.2%でした。合格率は出題内容、受験者層、準備状況で変わります。
「今回は高かったから次も簡単」「合格率が低いから自分には無理」と決めつけず、公式の出題区分表、サンプル問題、過去問題で現在地を測る材料として使いましょう。
受験者は2級合格者だけではない
1級に受験資格はなく、2級に合格していなくても受験できます。しかし、試験内容は2級の知識を使って積み上げるため、制度上受けられることと、合格準備が整っていることは別です。
2級の学習時間と理解度を振り返りたい方は、次の記事で前提を確認できます。

簿記1級の勉強時間は500〜600時間が一つの目安
日本商工会議所は、合格までの標準勉強時間を定めていません。500〜600時間は、TACが2級レベルの知識を前提に示している講義・復習込みの目安です。
週の学習時間から必要期間を逆算する
500〜600時間を単純計算すると、学習期間は次のようになります。
| 週の学習時間 | 500時間まで | 600時間まで | 向いている進め方 |
|---|---|---|---|
| 週7時間 | 約17か月 | 約20か月 | 毎日1時間を長く継続 |
| 週10時間 | 約12か月 | 約14か月 | 平日+週末で安定させる |
| 週15時間 | 約8か月 | 約10か月 | 次回または次々回を狙う |
| 週20時間 | 約6か月 | 約7か月 | 短期集中。復習時間を確保 |
これは休止期間や体調不良、仕事の繁忙期を含まない単純計算です。実際の計画には2〜4週間程度の予備を入れ、間に合わないときは受験回をずらせるようにします。
2級の理解が曖昧なら復習時間を追加する
連結会計、決算整理、工業簿記の基礎などで手が止まる場合、500〜600時間とは別に2級復習が必要です。
まず2級問題を時間を測って解き、間違えた理由を説明できるか確認してください。点数だけでなく、仕訳と計算の根拠が言葉になるかが、1級へ進む目安です。
- 2級の商業簿記・工業簿記を一通り説明できる
- 平日と休日の学習時間を具体的に決められる
- 受験回まで復習を続けられる
- 4科目の苦手を放置しない計画を作れる

簿記1級を受けるべき人・今は見送ってよい人
1級の価値は、難易度の高さではなく、目指す仕事と学ぶ内容が合っているかで決まります。
受ける価値が高い人
- 会計・財務を専門分野にしたい
- 大企業の経理、連結決算、原価管理、管理会計に関心がある
- 税理士・公認会計士など上位資格を検討している
- 2級学習を終え、さらに会計を深く理解したい
- 半年から1年以上の学習を継続できる
経理のキャリア全体から1級の位置づけを考えたい場合は、経験年数別のキャリアプランも確認してください。

今は見送ってよい人
- まず未経験から経理へ入ることが最優先
- 2級の内容がまだ定着していない
- 履歴書に書ける資格を短期間で増やすことだけが目的
- 仕事や生活の都合で週7〜10時間も確保できない
- 目指す仕事に1級の学習内容が必要か分からない
未経験転職では、1級合格を待つ間に応募機会を逃すより、2級を活かして求人確認・応募書類・面接準備を進めるほうがよい場合があります。

目的が違うなら別資格も比較する
家計・金融を学びたいならFP、経理実務の処理能力を測りたいならFASS、財務諸表の分析を深めたいならビジネス会計など、目的によって次の資格は変わります。
「難しい資格ほど有利」と考えず、担当したい仕事から逆算してください。


簿記1級は独学できる?教材より学習管理で判断する
独学で合格することは可能ですが、範囲が広いため「教材を読めるか」より「長期間、自分で修正できるか」が分かれ目です。
独学が向いている人
- 2級を独学で合格し、自分の復習方法が決まっている
- 分からない論点を公式資料や複数教材で調べられる
- 週ごとの進捗と科目別得点を記録できる
- 過去問題・答練で時間配分を修正できる
教材を増やしすぎると復習が浅くなります。基本教材、問題集、過去問題・模試の役割を分け、一つを終える基準を決めましょう。
講座が向いている人
- 4科目の学習順序を自分で組むのが難しい
- 質問できる環境が必要
- 試験日から逆算したカリキュラムが欲しい
- 仕事と両立するため、迷う時間を減らしたい
講座を選ぶ場合も、合格実績の数字だけで決めず、講義時間、質問回数、視聴期限、答練、教材更新、欠席時の振替を確認してください。
2・3級向け通信講座の比較記事は、講座選びの確認項目を整理する参考になります。ただし、1級対応コース・料金は各社公式で改めて確認してください。

合格までの4ステップと学習計画
1.2級の基礎を2〜4週間で点検する
商業簿記と工業簿記の問題を解き、苦手論点を一覧にします。復習に期限を設け、完璧になるまで1級を始めない状態は避けましょう。
2.4科目を一巡して全体像をつかむ
最初の一巡は、細部を完全に覚えるより、論点同士のつながりを把握します。講義・テキストの直後に基本問題を解き、理解したつもりを防ぎます。
3.科目別演習から総合問題へ移る
一巡後は問題演習の比率を上げます。間違いを「知識不足」「読み違い」「計算ミス」「時間不足」に分けると、次の対策が明確になります。
4.直前期は4科目の最低点を底上げする
本番と同じ時間で解き、総合点と各科目の得点を記録します。70%へ届いていても40%未満の科目があれば、その科目を最優先で戻します。

ナビ先生1級は「いつか時間ができたら」では始まりにくい資格です。まず次の試験日を仮置きし、今週の学習枠を予定表に入れてみましょう。続けられそうなら教材選びへ進めば大丈夫です。
簿記1級を仕事・次の資格へどうつなげる?
経理転職では資格だけで決まらない
1級は高度な会計知識の証明になりますが、採用は実務経験、担当業務、Excel・会計システム、コミュニケーション、応募先との相性も含めて判断されます。
すでに経理で働いている人は、決算、連結、原価管理、管理会計など、学んだ内容に近い業務へ手を挙げることで知識を経験へ変えられます。
年収を上げる方法も資格一つではありません。経験、役職、会社規模、専門領域を組み合わせて考えましょう。


税理士試験への接続を正確に理解する
日本商工会議所は、1級合格の特典として税理士試験の受験資格を案内しています。ただし、税理士試験は令和5年度から受験資格が緩和され、会計学科目の簿記論・財務諸表論は誰でも受験できます。
日商簿記1級合格は、受験資格が必要な税法科目へ進むための「資格による受験資格」の一つです。税理士を目指す人は、1級経由が自分に合うか、会計科目から直接始めるかを国税庁の最新案内で確認してください。
合格後の進路を受験前に一つ決める
1級合格をゴールにすると、知識を仕事へつなげる行動が遅れます。受験前に、次の候補を一つ仮決めしておきましょう。
- 現職で決算・管理会計の担当範囲を広げる
- 1級を評価する求人の要件を確認する
- 税理士・公認会計士の試験制度を比較する
- FASSやビジネス会計など実務・分析系資格を検討する


よくある質問
簿記2級に合格していなくても1級を受けられますか?
受けられます。日商簿記1級に下位級の合格という受験条件はありません。ただし、学習内容は2級の商業簿記・工業簿記を土台にするため、初心者が2級範囲を省くことはおすすめできません。
簿記1級はネット試験で受けられますか?
2026年9月時点で、1級は統一試験です。2級・3級のようなネット試験はありません。2026年度は6月と11月に実施され、2027年2月の統一試験は2級・3級のみです。
500時間勉強すれば合格できますか?
合格を保証する時間ではありません。500〜600時間は2級レベルを前提とした資格スクールの目安で、日本商工会議所の公式時間ではありません。科目別の理解度と本試験形式での得点を合わせて判断してください。
簿記1級があれば未経験でも経理へ転職できますか?
資格は強い学習実績になりますが、採用を保証しません。未経験者は、1級学習を続けながら求人を確認するか、2級を活かして先に実務経験を得る選択肢も比較しましょう。
簿記1級と税理士はどちらから目指すべきですか?
会計の基礎を幅広く固めたい、税法科目の受験資格を1級合格で得たいなら1級経由が候補です。税理士になる意思が明確で、会計学科目から直接進みたい場合は税理士試験の学習を始める方法もあります。最新の受験資格と試験科目を確認して決めてください。
まとめ|1級を目指すなら目的と週の学習時間を先に決めよう
簿記1級は、商業簿記・会計学・工業簿記・原価計算の4科目を180分で受験し、全体70%以上かつ各科目40%以上が必要な上位資格です。直近5回の合格率は10.5〜21.2%で、2級レベルを前提とした学習時間は500〜600時間が一つの参考になります。
会計を専門にしたい人は1級を目標にし、経理へ入ることが先なら、資格学習と実務経験・応募準備のどちらを優先するか決めてください。 難しい資格を取ること自体ではなく、学んだ内容を担当業務や次のキャリアへつなげることが大切です。
次にすることは、公式サンプル問題を一度見て、次回または次々回の試験日を仮置きし、1週間に確保できる時間を書き出すことです。週10〜15時間を続けられそうなら教材・講座を比較し、難しければ2級の復習、実務経験、別資格のどれを先にするか選びましょう。
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